10月8日朝9時半。
アブダビ発 アテネ行きのエティハド航空機は小さなジェット機だった。
今日のアブダビ空港の景色は初めて訪れた時の焦燥感に満ちた景色とは全く違い、
活気があり財布の中にもお金がある。ゆったり観察する時間もあった。
今日どうしてもこの空港でしようと決めていた事がある。
前回無一文で野良Wi-Fiに必死で掴まりながらメールチェックをしたのは空港ロビー片隅の地面。
あの時喉が乾いて死にそうで、目の前のスターバックスで和やかに飲食している観光客が心から疎ましかった。
だから今日は早めに空港に来てスタバでゆったりしてやりたいという思いがあったのだ。
空港ではまず手持ちのアブダビの通貨、全ディルハムをユーロに両替する。
そして20ディルハムだけを残し、カプチーノを注文した。ジャスト20ディルハム。
美味しかった。何だか格別の味がした。
日本で飲んだらごく普通だと思うが、この空港、このスタバで飲むから美味かったのだ。
前回叶わなかった事をやり遂げる、そこに意義があると思っていた。
今日のフライトの待機をしている制服を身にまとったアテンダントたち。
白装束の高貴なビジター。到着したばかりでフライトの疲れを癒すトラベラー。
皆それぞれの出発をそれぞれのタイミングで過ごしている。
ふと辺りを見回す。どこにもクレジットカードが飲まれて悲壮感漂う人は見あたらなかった。
喉が乾いて干からびそうになっている人もいそうになかった。
いや、もしかしたらどこかにいたのかもしれない。
心に余裕が出来ると自分の至近距離しか観察しないもんだ。辺りに無関心になるからだ。
サバイバル最中の男だったら周りで何が起こっているか目をギラギラさせているが。
困っている人を助ける、そんな簡単かつ難しい事をこれからは率先して行こうと思った。
それがアブダビ大使館の人たち、二人の親友、日本の相棒さんから学んだ大事な教訓。
俺が助けれた幸運を、次に違う人を救う事で恩返しすることにした。映画のpay forwardのように。
さて、急いでフライトのチェックインをしなくては!、とdepartureに向かう。
カウンターでは少々時間がかかった。
変更のかかった俺のe-ticketは職員さんの確認作業を手間取らせた。
エティハド航空から再発行してもらったticketナンバーを手書きで伝えるも、やはりwait for a moment, sir?
そこで、成田でもらっていたストライキ原因の”欠航証明書”(これは成田で頼み込んで発行してもらった公的証明)をすかさず出してみる。
効果てきめん、すぐに搭乗手続きが済んだ。やはりこういう時のためにもらっておいて正解だった。
本来なら帰国後ファックスで送ると言われたのだ。魔法の紙に思えた。
必要な手荷物検査を済ませアテネ行きの小さなジェット機に乗り込む。
いよいよだ。いよいよアテネへ向かうのだ。そう思ったらゾクゾクっと身震いした。
このあたりでギリシャ人をよく見かけるようになる。独特な話し方だなぁと観察してみる。抑揚が可愛らしい。
飛行機内では太っちょアラビアンおじさんばかりで、離陸直後にその体格のせい!?でシートが目一杯倒される。
こりゃ狭すぎる、、と負けじと俺も倒すが、今度は後ろの太っちょおじさんの膝が邪魔し、いっさい倒せない。
こういうわけで、ほとんど着陸まで垂直座りで5時間ほど過ごす羽目になった。
機内食はアラビア料理。夕べ食べたイエメン料理の同じメニューが出てきて歓喜乱舞。
アラビア料理は本当に俺の口に合うようだ。ラム肉の乗っかったライス。
これはいくらでも食べてしまいそうな美味具合。
食事が済んだら数時間寝てしまっていた。
機長アナウンスでアテネに間もなく到着すると聞こえてくると、急に心臓が高鳴った。腕時計とiPhone、デジカメ、タブレットPCの時刻をアテネ時間に合わせる。
初めてアテネの空気を味わった時、何かの香りがした。後で分かった事だけどオリーブの香りだった。
空港の外に出てみると気温は暖かく、そして気まぐれで変わりやすい、そういう印象を感じた。
今さっきまで無風だったのに、もうびっくりするくらいの風。
これは過ごしやすいぞ~と気分が一気に高まる。
この後にすべき事は、Olympic航空国内線でアテネ~ミコノス間を飛行機で移動すること。
当初の予定はピレウス港からフェリーでミコノス入りしようと考えていたが、
例のアテネ空港のストライキや、アテネ市内のデモ活動が活発化していたので
面倒事は避けたいという予感があっての変更だった。
この判断は成功だった。アテネ空港内の移動だけですぐさま旅立てる。
乗り換え時間は2時間ほど余裕があったのでのんびりアテネ空港内を散策してみた。
やはりどの国の空港も風情がある。ここにいる皆がそれぞれどこかへ旅立つのだ。
みんな活気と賑やかさと喜びに満ち溢れている風に見える。
そんな中一人不安に思っていた俺だけど、怠慢!?と口コミされるOlympic航空機は無事離陸した。
小さな小さなプロペラ機。機内はかなり狭く爆音がする。セスナ機はうるさいんだな、と知る。
ほんのおまけみたいな機内食を食べながら、わずか40分程で憧れの地、ミコノスにたどり着いた。
ちなみにこのミコノス行きの飛行機も例のストライキで、航空会社都合で予約がオールキャンセルになっていた。
後日、振り替えのために連絡をするように、とOlympic航空からSMSがiphoneに入っていたが、電話をすると何と驚くべき事に有償で再度買い直せとの返事があり驚いた。
この不条理をS君はドバイの洒落たカフェでスマートに話をまとめてくれ無償振り替えをしてくれたのだった。
無事にミコノスにたどり着いた時、心の中でS君に心からお礼をつぶやいた。
ところでミコノス行きの機内で話しかけてくれた隣席の女性(これがかなりの美人さん)
がびっくりして目が点になるほどの不安定な着陸の仕方をし機体がぐらぐら揺れた。
強風のせいだろう。ギリシャはとにかく風が強い。
その彼女はとても気さくでどんどん話しかけてくれる。
一緒にご飯でもと誘われたので宿泊するホテルの連絡先を伝え、相乗りタクシーでミコノスタウンへ向かった。
この日は天候が大きく崩れ始め前日までの晴天が大嵐に変わっていった。
ミコノスの強風は噂には聞いていたがこれほどまで強いとは、と驚きを隠せなかった。
「また今夜ね」と彼女が先にタクシーを降り、ミコノスの中心部までタクシーはまた向かい始めた。
今日のホテルは中心部スクウェアから歩いてすぐなので、
タクシーから降りてから地図頼みで狭い狭い可愛らしい路地に入り込むことにした。
予約してあるホテルからは事前に、絶対に地図を持参して来るように、じゃないと迷いますと事前に連絡があった。
一歩路地へ入るとそこは想像以上の可愛らしさで思わず息を飲んだ。一歩も歩けなくなるくらいの感動。
今見ている1シーンだけでもまだ受け入れられない衝撃がある、これ以上先へ進めない。とてもまだ心の準備が整っていなかった。
デジャブ現象の10倍強い感じ。見たことあるのに今初めて目にしてる。本当妙な感じだった。
とても細部まで知り尽くしているのに、手で触れ、爪先でペンキを擦り、木の手すりを撫でる。
石畳をスリスリ触り一人で興奮していた。長年の夢がついに叶った瞬間。
そうか、お前さんたちはそういう材質で出来ていたんだね・・・と心の中でつぶやく。
目の前にある建物は全て丸っこく角が無い。どこを見渡しても、直線的・幾何学的要素を感じない。
手作りのおうち、粘土のおもちゃ、カラフルで愛嬌たっぷり、そういう印象を一発で受けた。
あ、ありえない・・・こんなに可愛いのか!とにかく鼓動が高まったまま静まらなかった。
小道を進みやはり迷いながらたどり着いたそのホテルは、ガーデンに囲まれ美しいミコノスの伝統建築で造られていた。
こんな素敵なホテルに泊まれるとは!と、ここまでの長い道のりを振り返って感無量の気分で満たされていた。
オーナーのおばあちゃんはすごく親切で安心出来るホテルだなぁと感じた。
本来なら3泊予定のこのホテル、アテネ空港のストライキで到着が遅れてしまった。
そのため既に前金で支払っていたので2泊分は無駄にしてしまった。
まぁ仕方ないだろう。ギリシャ政府が補償でもしない限り無理だろう。
交渉もこの日は疲れ果てていて面倒だから手を抜こうと思った。
ミコノスの最初の洗礼は鍵の開け閉めの難しさ。
何度も何度も繰り返してやっと慣れる。
ちょっと力めば壊れてしまいそうな古風なドアだった。しかもやたらガチャガチャうるさく鳴り響く。
無理矢理鍵をこじ開けている人のような騒音がした。
部屋は割と狭い方だが、ベランダが素晴らしい。辺りの景観もそうだし何よりベランダの床がまさにミコノス風の石畳なのだ。
飛び跳ねたくなる衝動を抑えて(実際は飛び跳ねた 笑)荷物を開き、wifiの接続実験を済ませてしばしメールチェックなどをしていたら、
突然の雷雨が始まった。何度かの雷鳴でついにミコノスの街の大部分が停電した。
さっきまで隣接する屋外映画館でちびっこたちの歓声が鳴り響いていたのが、悲鳴に変わる。
もちろん俺が泊まっているホテルも真っ暗になった。wifiも切断される。
何事だ~~~と一瞬焦るも、来たな来たな?またトラブルかぁ?と案外楽しんで過ごしていた。
アブダビ事件を経験したらもう、ちょっとやそっとでは驚かない。
小一時間ほど停電したまま、その後復旧後も付いたり消えたりを繰り返す。夜中、雷鳴は鳴り響いていた。初めて聞くかのような爆音で。
ホテル内のあちこちでもギシギシ・バタンバタン鳴っていたのでホテルが破壊されるんじゃないかと少し不安もあった。
初日からツイてない。嵐を一緒に連れてきたかのように思えた日だった。
まぁどってことは無いだろう!もうミコノスに着いたのだから!今日も長い道のりを移動したな。
あまりの安堵感に暴風雨もいつの間にか気にならなくなり、気が付いたら眠りに落ちていた。
つづく
ミコノスで撮影した全ての写真はこちら
その1
その2
アブダビ発 アテネ行きのエティハド航空機は小さなジェット機だった。
今日のアブダビ空港の景色は初めて訪れた時の焦燥感に満ちた景色とは全く違い、
活気があり財布の中にもお金がある。ゆったり観察する時間もあった。
今日どうしてもこの空港でしようと決めていた事がある。
前回無一文で野良Wi-Fiに必死で掴まりながらメールチェックをしたのは空港ロビー片隅の地面。
あの時喉が乾いて死にそうで、目の前のスターバックスで和やかに飲食している観光客が心から疎ましかった。
だから今日は早めに空港に来てスタバでゆったりしてやりたいという思いがあったのだ。
空港ではまず手持ちのアブダビの通貨、全ディルハムをユーロに両替する。
そして20ディルハムだけを残し、カプチーノを注文した。ジャスト20ディルハム。
美味しかった。何だか格別の味がした。
日本で飲んだらごく普通だと思うが、この空港、このスタバで飲むから美味かったのだ。
前回叶わなかった事をやり遂げる、そこに意義があると思っていた。
今日のフライトの待機をしている制服を身にまとったアテンダントたち。
白装束の高貴なビジター。到着したばかりでフライトの疲れを癒すトラベラー。
皆それぞれの出発をそれぞれのタイミングで過ごしている。
ふと辺りを見回す。どこにもクレジットカードが飲まれて悲壮感漂う人は見あたらなかった。
喉が乾いて干からびそうになっている人もいそうになかった。
いや、もしかしたらどこかにいたのかもしれない。
心に余裕が出来ると自分の至近距離しか観察しないもんだ。辺りに無関心になるからだ。
サバイバル最中の男だったら周りで何が起こっているか目をギラギラさせているが。
困っている人を助ける、そんな簡単かつ難しい事をこれからは率先して行こうと思った。
それがアブダビ大使館の人たち、二人の親友、日本の相棒さんから学んだ大事な教訓。
俺が助けれた幸運を、次に違う人を救う事で恩返しすることにした。映画のpay forwardのように。
さて、急いでフライトのチェックインをしなくては!、とdepartureに向かう。
カウンターでは少々時間がかかった。
変更のかかった俺のe-ticketは職員さんの確認作業を手間取らせた。
エティハド航空から再発行してもらったticketナンバーを手書きで伝えるも、やはりwait for a moment, sir?
そこで、成田でもらっていたストライキ原因の”欠航証明書”(これは成田で頼み込んで発行してもらった公的証明)をすかさず出してみる。
効果てきめん、すぐに搭乗手続きが済んだ。やはりこういう時のためにもらっておいて正解だった。
本来なら帰国後ファックスで送ると言われたのだ。魔法の紙に思えた。
必要な手荷物検査を済ませアテネ行きの小さなジェット機に乗り込む。
いよいよだ。いよいよアテネへ向かうのだ。そう思ったらゾクゾクっと身震いした。
このあたりでギリシャ人をよく見かけるようになる。独特な話し方だなぁと観察してみる。抑揚が可愛らしい。
飛行機内では太っちょアラビアンおじさんばかりで、離陸直後にその体格のせい!?でシートが目一杯倒される。
こりゃ狭すぎる、、と負けじと俺も倒すが、今度は後ろの太っちょおじさんの膝が邪魔し、いっさい倒せない。
こういうわけで、ほとんど着陸まで垂直座りで5時間ほど過ごす羽目になった。
機内食はアラビア料理。夕べ食べたイエメン料理の同じメニューが出てきて歓喜乱舞。
アラビア料理は本当に俺の口に合うようだ。ラム肉の乗っかったライス。
これはいくらでも食べてしまいそうな美味具合。
食事が済んだら数時間寝てしまっていた。
機長アナウンスでアテネに間もなく到着すると聞こえてくると、急に心臓が高鳴った。腕時計とiPhone、デジカメ、タブレットPCの時刻をアテネ時間に合わせる。
初めてアテネの空気を味わった時、何かの香りがした。後で分かった事だけどオリーブの香りだった。
空港の外に出てみると気温は暖かく、そして気まぐれで変わりやすい、そういう印象を感じた。
今さっきまで無風だったのに、もうびっくりするくらいの風。
これは過ごしやすいぞ~と気分が一気に高まる。
この後にすべき事は、Olympic航空国内線でアテネ~ミコノス間を飛行機で移動すること。
当初の予定はピレウス港からフェリーでミコノス入りしようと考えていたが、
例のアテネ空港のストライキや、アテネ市内のデモ活動が活発化していたので
面倒事は避けたいという予感があっての変更だった。
この判断は成功だった。アテネ空港内の移動だけですぐさま旅立てる。
乗り換え時間は2時間ほど余裕があったのでのんびりアテネ空港内を散策してみた。
やはりどの国の空港も風情がある。ここにいる皆がそれぞれどこかへ旅立つのだ。
みんな活気と賑やかさと喜びに満ち溢れている風に見える。
そんな中一人不安に思っていた俺だけど、怠慢!?と口コミされるOlympic航空機は無事離陸した。
小さな小さなプロペラ機。機内はかなり狭く爆音がする。セスナ機はうるさいんだな、と知る。
ほんのおまけみたいな機内食を食べながら、わずか40分程で憧れの地、ミコノスにたどり着いた。
空から眺めるミコノス島
すごく小さなミコノス空港 オフシーズンだからか 人はまばら。
ちなみにこのミコノス行きの飛行機も例のストライキで、航空会社都合で予約がオールキャンセルになっていた。
後日、振り替えのために連絡をするように、とOlympic航空からSMSがiphoneに入っていたが、電話をすると何と驚くべき事に有償で再度買い直せとの返事があり驚いた。
この不条理をS君はドバイの洒落たカフェでスマートに話をまとめてくれ無償振り替えをしてくれたのだった。
無事にミコノスにたどり着いた時、心の中でS君に心からお礼をつぶやいた。
ところでミコノス行きの機内で話しかけてくれた隣席の女性(これがかなりの美人さん)
がびっくりして目が点になるほどの不安定な着陸の仕方をし機体がぐらぐら揺れた。
強風のせいだろう。ギリシャはとにかく風が強い。
その彼女はとても気さくでどんどん話しかけてくれる。
一緒にご飯でもと誘われたので宿泊するホテルの連絡先を伝え、相乗りタクシーでミコノスタウンへ向かった。
この日は天候が大きく崩れ始め前日までの晴天が大嵐に変わっていった。
ミコノスの強風は噂には聞いていたがこれほどまで強いとは、と驚きを隠せなかった。
「また今夜ね」と彼女が先にタクシーを降り、ミコノスの中心部までタクシーはまた向かい始めた。
嵐がやって来る直前 どんよりお天気
今日のホテルは中心部スクウェアから歩いてすぐなので、
タクシーから降りてから地図頼みで狭い狭い可愛らしい路地に入り込むことにした。
予約してあるホテルからは事前に、絶対に地図を持参して来るように、じゃないと迷いますと事前に連絡があった。
一歩路地へ入るとそこは想像以上の可愛らしさで思わず息を飲んだ。一歩も歩けなくなるくらいの感動。
今見ている1シーンだけでもまだ受け入れられない衝撃がある、これ以上先へ進めない。とてもまだ心の準備が整っていなかった。
デジャブ現象の10倍強い感じ。見たことあるのに今初めて目にしてる。本当妙な感じだった。
とても細部まで知り尽くしているのに、手で触れ、爪先でペンキを擦り、木の手すりを撫でる。
石畳をスリスリ触り一人で興奮していた。長年の夢がついに叶った瞬間。
そうか、お前さんたちはそういう材質で出来ていたんだね・・・と心の中でつぶやく。
目の前にある建物は全て丸っこく角が無い。どこを見渡しても、直線的・幾何学的要素を感じない。
手作りのおうち、粘土のおもちゃ、カラフルで愛嬌たっぷり、そういう印象を一発で受けた。
あ、ありえない・・・こんなに可愛いのか!とにかく鼓動が高まったまま静まらなかった。
小道を進みやはり迷いながらたどり着いたそのホテルは、ガーデンに囲まれ美しいミコノスの伝統建築で造られていた。
分かりにくい小道を通り抜けると
行き止まりに看板を発見
敷地内はガーデンになっている
こんな素敵なホテルに泊まれるとは!と、ここまでの長い道のりを振り返って感無量の気分で満たされていた。
オーナーのおばあちゃんはすごく親切で安心出来るホテルだなぁと感じた。
本来なら3泊予定のこのホテル、アテネ空港のストライキで到着が遅れてしまった。
そのため既に前金で支払っていたので2泊分は無駄にしてしまった。
まぁ仕方ないだろう。ギリシャ政府が補償でもしない限り無理だろう。
交渉もこの日は疲れ果てていて面倒だから手を抜こうと思った。
ミコノスの最初の洗礼は鍵の開け閉めの難しさ。
何度も何度も繰り返してやっと慣れる。
ちょっと力めば壊れてしまいそうな古風なドアだった。しかもやたらガチャガチャうるさく鳴り響く。
無理矢理鍵をこじ開けている人のような騒音がした。
部屋は割と狭い方だが、ベランダが素晴らしい。辺りの景観もそうだし何よりベランダの床がまさにミコノス風の石畳なのだ。
飛び跳ねたくなる衝動を抑えて(実際は飛び跳ねた 笑)荷物を開き、wifiの接続実験を済ませてしばしメールチェックなどをしていたら、
突然の雷雨が始まった。何度かの雷鳴でついにミコノスの街の大部分が停電した。
さっきまで隣接する屋外映画館でちびっこたちの歓声が鳴り響いていたのが、悲鳴に変わる。
もちろん俺が泊まっているホテルも真っ暗になった。wifiも切断される。
何事だ~~~と一瞬焦るも、来たな来たな?またトラブルかぁ?と案外楽しんで過ごしていた。
アブダビ事件を経験したらもう、ちょっとやそっとでは驚かない。
小一時間ほど停電したまま、その後復旧後も付いたり消えたりを繰り返す。夜中、雷鳴は鳴り響いていた。初めて聞くかのような爆音で。
ホテル内のあちこちでもギシギシ・バタンバタン鳴っていたのでホテルが破壊されるんじゃないかと少し不安もあった。
初日からツイてない。嵐を一緒に連れてきたかのように思えた日だった。
まぁどってことは無いだろう!もうミコノスに着いたのだから!今日も長い道のりを移動したな。
あまりの安堵感に暴風雨もいつの間にか気にならなくなり、気が付いたら眠りに落ちていた。
つづく
ミコノスで撮影した全ての写真はこちら
その1
その2