2011年11月5日土曜日

【エーゲ旅行記】雨男とミコノス

10月10日 ミコノス滞在3日目の朝も暴風雨で始まった。

 吹き荒れる風と雨。そんな中おとつい泊まったペネロピホテルへ戻る。
おばあちゃんは戻って来た俺を優しく迎えてくれた。
やっぱりこのホテルは本当に心地がいい。


ホテルのベランダ


ペネロピホテルからタウンに出る風景



ところで今回の旅、エーゲ海の雨期に当たっているため何かと行動範囲が狭まっていた。
散策しようと思えば冬着にでもならないと、落ち着いて歩いていられない。
とにかく風が冷たい。そして強風に乗って雨が飛んでくる。
こういうお天気ではカメラのレンズもすぐ水滴が付いてしまって、
拭いては撮り、また拭いては撮りの繰り返し。
何度電源の入り切りを繰り返しただろうか。
この日は昨夜びしょ濡れになって体ががっつり冷え切っていたため
一日ホテルにいようと諦めていた。

幸いにネット環境が非常に良かったのでSkypeで日本にいる相棒さんとお話したり
明日の計画をぼんやり考えていた。
Twitterは旅行に来るまでは殆ど使ったことが無かった。
旅に出てからおもしろ半分でつぶやき始めたが、これが何だかすごく便利だ。
wifi電波が弱くてもつぶやきならメールを送るよりスムーズに生存確認を送ることが出来た。
メールは時に無能だった。送ったはずのメールがほとんど送信失敗していたからだ。
そして今回初めて知ったTwitterの便利な使い方。
ミコノス、とかサントリーニ、とかで検索したら、同じ日に異国のこの地で観光している人を検索出来たからだ。
これは一人旅の俺にはすごく楽しく感じた。

英語の問題はこの旅行では特に困ることは無かったけど、日本語での交流がたまに恋しくなる日があり、
そういう時、この瞬間に同じようにミコノス観光をしていた人との交流は、たとえつぶやきレベルの短い通信でも顔がほころぶ時間であった。
「おお、バギーのレンタルして観光しているんだぁ」とか「おー彼らもこの暴風雨で大変な目に遭っているんだなぁ」
この時代、みなITデバイスを持参しているからそれぞれの方の撮影した写真を見ながら、「おー俺よりうまく撮ってるなーさすが!」など、現代の旅の楽しみ方は随分進化しているんだなぁ、って感心した。
出来ればTwitterで知り合った人たちとワイワイしてみたい気持ちがあったが、羨ましい、彼らは連れがいて俺のような一人旅はいなかったようだ。残念。
まぁいいか。そのうち楽しい一期一会の機会も訪れるだろう。

そうこうしていると一瞬だけどミコノスの街に晴れ間が差してきた。
この瞬間を逃してはいけない!と、ホテルから折りたたみ傘を借り散策に出かける。
晴れ間といっても厚い雲が空中にあったので、せっかくの写真も薄暗く撮れていた。
にしても、黙って部屋にこもっているよりは遙かにいい。
無我夢中で写真を撮りまくった。
風車、パラポルティアニ教会、聖ニコラス教会、街のオシャレな風景、リトルベニスと言われる美しいエリア、
どれもが不意に視界に飛び込んでくるから面白い。

















既に白の楽園にいっぱい再現してある実物の建物を、感極まりながらパシパシ撮りながら進む。
強風や時折落ちる小雨など知った事じゃない、本当に楽しい瞬間だった。
これらの建物は、狭い小道を「こっちかな、あっちかな」て迷いながら進んで、
角を曲がると突然出現してくるので、こんなワクワクするお散歩はこの世に無いだろうなと思った。
小雨のため早足で歩く観光客たち。一瞬の間に差すお日様を俺だけじゃなく皆喜びながら交差しあう。
昨日は閑散だったお土産店も大繁盛だ。あちこち歩くついでにミニマーケットやギロ屋をいっぱい見つけ頭の中に位置をたたき込んだ。
よし、次来る時は迷わないぞ、と地図に印を付けもう安心。



大事な事を思い出した。そうだまだペリカンに会っていないじゃないか!
そう思った矢先に、誰もいない路地の一角に、彼”ペドロス君”がいた。
「えーーーーこんな風に見つかるもんなん?」とびっくりしながら、ペリカン君を観察。
彼はほとんど動きが無く、半分立ったまま眠っているかのよう。
時折目をぱちくりさせてこちらを見ているのが分かる。
ペリカン君を独占しながら撮影していると、やはりお目当てを見つけたかのように他の観光客で路地が混雑し始めた。
それぞれに皆、このおっとりした彼との空間で記念撮影をしていた。
そう、このペリカンこそミコノスの象徴とも言っていい。俺も予期せず出会えて本当に嬉しく思った。
パカパカパカパカってくちばしを鳴らしながら毛繕いをするのがユニークな動物だなぁって思えた。








ところで、ミコノスは近景で眺めるのもいいが、やはり遠景が素晴らしいと感じた。街全体の統一感が半端ないのだ。
住民たちは皆この街を愛し、みな同じスタイルでこの地を永遠の憧れの観光地であるよう維持管理を徹底させている気がした。
彼らは半年周期でペンキを塗り替えたり、石畳を塗り替えたり、ずっと収入源が途切れないよう管理しているんだな。
ギリシャは観光立国。工業国でも農業国でも無さそう。彼らにとっては当たり前の事なのだろう。
なのに空港閉鎖するくらいストライキしたらダメじゃん、と同時に思いながら 笑

ミコノスはどのお店に行っても訛はきついが英語で応対してくれる。
この頃はギリシャに来て間もなかったので彼らのキツい訛に結構苦労した。
俺は米語アクセントと発音には自信があったけど、正しい発音で尋ねても、「??」という顔をされる。
だからギリシャで使われる英語のイントネーションとリズム・発音は、これまた異種な物なんだなって思った。
思えばアブダビだってそうだった。郷に入れば郷の英語を!なんだな。

俺は既に白の楽園で創作済みの建物に出会う度、心の中で挨拶をした。
「やっと来たよ。あなたに会うために遙々日本から。」
この旅が単なる観光旅行ではなく、”巡礼の旅”と銘打ったのは大げさではなく、俺にとっては本当に純粋に巡礼と思っていたから。
ずっと前にこの地に誰かが作った建物。でも同時に俺が作ったんじゃない?という錯覚。
名所を訪れる度にそういう、妙な感覚でいっぱいだった。









shadow effect 00004




 Farewell to Secondlife05









この頃から、談笑がはずんだ相手にはセカンドライフ内で撮影したフリッカーアルバムを見せるようになっていた。
相手の反応は様々だったけど、概ねすごくびっくりしてもらった。
そのお陰で連絡先を交換しあったり、おもしろい出会いが出来たと思う。

ところでミコノスで楽しみにしてたギロピタというファストフード。
ピタというインドのナンのような生地で、チキン・ポーク・羊肉などを巻いてあり
その中にフレンチフライと辛みの強い紫たまねぎ、キュウリを刻んだ酸っぱいヨーグルトソースが入っている食べ物だ。
値段も手頃、どの店でも2~2.5ユーロで買える。
俺はいろんな店で食べ比べをするつもりだった。この日はある有名な店に入り欲張って3個も買った。
明日の朝か昼にも食べれるようにと。








初めて口にするギロピタはびっくりするほど、マズかった。
えーーーこんなハズない。誰かの書いた旅行記ブログでは皆同様に「おいしかった」と書いてあったではないかぁ。
んー俺の口が悪いのか、グルメではない自分を恨む。
パン生地も羊肉スライスもガリッガリに堅く、タマネギは辛すぎて胃が焼ける。
ヨーグルトソースも中途半端な酸っぱさで、全体的に口に頬張るとモサモサする感じ。
飲み物で飲み込まないと食べずらいなと思う。
あまりに残念だった・・・

話を戻し、ミコノスの街の散策ついでにあるお土産店に入った。
日本へ出すエアメールのはがきを買うためだった。
店に入るといっぱいの絵はがきが陳列してあったので、何枚か手に取る。
この日は雨だったので葉書同士がくっついているので、少々手間取った。
そうしたら、ずっと上の棚より陶器の50ユーロと書いてあるお皿が落ちてきたではないか。
やば、、俺のせいにされたらたまらん。欲しくもない物を弁償する気もない。
ガシャンと大きな音を立てたので店員がすぐ近づいてくる。
ギリシャ語で何やら悪態を付いている。ん、だから俺のせいじゃないってと俺はそっぽを向く。
破損した部位をそーっと撫でながら確認している店員。
俺は思った。一切そっち見たり、うっかりsorryなどとでも口走るとマジで弁償求められるな。
徹底して大騒ぎしかけている店員を見ないよう、となりのミニチュアお土産を物色している振りをする。
幸いにして店員は直接俺に、sir?と声をかけることは無かった。いえい!
もし話しかけられても英語が分からない振りをするか、アホの振りでもしようと決めていた。
さて、ここですぐ店を出るとかなり怪しまれる。
なので10分くらい興味もない他のお土産品をさも買うつもりでいるかのように360度ぐるぐる観察してみる。
内心、可笑しくて笑いがこみ上げてくるのであったが。
どこへ行ってもびっくりカメラみたいな事が起こるなぁ・・・と。
この日はドイツ人ご一行がどっと訪れた日だった。きっとドイツでは何かしらの連休でエーゲ海クルーズの団体さまなのだろうと推測。
お土産店にもドイツ人団体が押し寄せた隙に、俺はそそくさと身軽に店を飛び出し、何事も無かったかのように散策を再開した。

間もなくまた暴風雨がやって来て、傘なんて差してられる状態でもないくらいで、滑る石畳を走ってホテルに戻る。


 嵐で全壊した折りたたみ傘


この頃はもう、あの迷いやすい路地を完璧制覇していてどこへ行ってもすぐホテルに戻ってくる事が出来た。
悪天候がすべて悪いわけでもない。天気のグチをきっかけにして多くの人と会話のきっかけを作れたからだ。
殆どが一期一会で、決まりきった会話の流れになるけれど、俺と同様みーんなミコノスに来たくてたまらなかったという感情共有が出来て旅の醍醐味を感じられた。「俺は今ミコノスにいるんだ!」と随所で確認しては、まだ信じられない事実に驚きながら満足していた。



部屋に戻ってから体がガッツリ冷えてしまっていたので、熱いお風呂に浸かってこの日はすぐ就寝した。
 
明日の晴天に備えて。


つづく



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その1


その2