2011年11月6日日曜日

【エーゲ旅行記】サントリーニ上陸

名残惜しいミコノスのペネロピホテル。




結局ここには4泊することが出来た。
ミコノスにはたくさんホテルがあるがここは安価で(オフシーズンで45ユーロ)タウンの中心部に位置するためアクセスがとてもしやすかった。
何より、経営している奥さんとそのお母さんと思われるおばあちゃんがとても親身で温かい。
あぁとうとうミコノスともお別れか。
まるでこの小さくて可愛い街を自分の所有物かのような錯覚がとっくに沸き起こっていて
そこから去る時の心情はまるで、セカンドライフのシムを閉鎖する時の感覚にとても良く似ていた。
永遠に存在する、ただしそこから俺は抜け出てしまう、そういった虚脱感に似た軽い疲れを感じた。

妙な事にミコノスに着いた瞬間から、ここに住んでいる他の誰よりも、ましてや数多くの観光客の誰よりも、この小さな完成し尽くされた可愛いテーマパークをすべて知り尽くしているんだぞ的な錯覚を常に感じていたからだろう。
何度も何度もおばあちゃんに感謝の意を伝え、
優しいおばあちゃんは去ってゆく俺を温かく見送ってくれた。
「またミコノスを訪ねてくるんだよ?」と。
6匹の黒猫ちゃんとわんちゃんも可愛らしい表情で最後にさよなら。
「あ、忘れていたわ、あなたにプレゼントよ」とミサンガを腕に結んでくれ、
結ぶのに時間が結構かかったけど、ずっと手間取ってくれても俺は嬉しい気持ちがした。
とっても優しいおばあちゃんだった。

港へ向かう途中、ある教会前でアメリカ人観光客のDavidとMelissaに出会う。
俺は道中、持参した黄色の人形を写真に写り込むように撮る時があって、
赤い可愛らしい教会でその作業を見ていた二人が大爆笑しながら
(文字通りコメディドラマのような笑い声にて)声を掛けてくれた。
アメリカ人は陽気でフレンドリーだ。近頃無愛想なギリシャ人に飽き飽きしていたから妙に新鮮で嬉しかった。
とにかくデービッドには黄色の人形が好評で、
「彼は一緒に世界を歩いているのか?」
「こんなアイディア良く思いついたね」
「同じ風に黄色の人形と教会を撮ってもいいかい?」
等々、無邪気な子供のようにはしゃいでいた。
かくかくしかじか、実は俺、ミコノスやサントリーニを3Dオブジェクト化して造っているんだ、
と自己紹介しながら持参したflickrアルバムを見せてあげたら、これ以上ないくらい大げさに喜んでくれる。
面白いなぁ、アメリカ人は。本当に陽気。
アルバムの中の一枚で気に入った物を差し上げた。裏にサインを欲しいと言うので、漢字がいいでしょ?と尋ねると
「おお、ほんと??村上春樹は英語で書いてたから漢字が恋しい!」と言う。
とにかく俺がする事する事を大げさにリアクションをしてくれるので分かりやすいし嬉しかった。

その画像をブログにアップするよ、と伝えたらウェブサイトを教えて!と目をまん丸にして興奮してくれていた。
15分ほどのやり取りであったが、すごく楽しいひとときであった。
(前の晩ギロピタ屋の女店員と口論になってイヤな思いをしただけに)
そう。俺はこういう対話がしたいんだぁーー!

さて、サントリーニへ出発しなくてはいけない。フェリー乗り場へ向かう。
乗り場はOLD PORTというミコノスの湾内にある大きな港。
ちょうどタウンの対岸にあるため少し歩かなくてはいけない。






この5日間で初めての爽やかな晴天の元でサングラスをしていても眩しいお天気さんに恵まれながら、
思いトランクを石畳の上をよいしょよいしょと転がして30分ほどしたら乗り場までたどり着いた。
港ってのは風情がある。
これからやって来た人と、これから去ってゆく人が一本の道で交差する。
行き交う人たちはそれぞれ真逆の思いを持ちながらこの地に立っている。
俺と同じように去る面々は存分にミコノスを堪能したのであろう。
おそらくこれから向かう別の土地への思いを馳せながら、重い荷物をゴロゴロと引っ張っていく。
それにしても強い日差しだ。目を差すかのような眩しさ。とても10月半ばの日差しとは思えない。
ミコノス最終日にこの日差しを体験出来て本当に良かった。4日間も毎日うす暗い空だったから特にそう思う。


ところでやっぱり高速艇は遅刻した。この間30分。本当に来るのか?港はここで合っているのか?
やはり心配になるので付近の人に何度も尋ねた。
この旅は本当にとんでもない事が起こるから、今回は念には念を入れてわざわざ長い階段上にある旅行代理店まで尋ねにも行った。
無事に高速フェリーに乗船出来た時、随分とホッとした。


高速艇スーパージェット



船内はガラガラでオフシーズンなんだなぁ、と肌で感じる事が出来た。
サントリーニまでの所要時間はおよそ2時間半。
その間2つか3つの島に立ち寄りそこで降りてゆく人もいた。



うつらうつらしながらフェリーの中を過ごし、気づけばサントリーニへの到着を告げるアナウンスが流れていた。
窓の外を見ると、幾度も見てきたかの地のそびえ立つ絶壁が目の前に飛び込んで来たではないか!
興奮を抑える事が出来ず船内から写真を何枚も撮った。



あいにくフェリーの甲板へは出る事が出来ず、エーゲの風を感じながらの上陸とはならなかったがそれでも十分に上陸の瞬間を堪能することが出来た。
「とうとうやって来たか」胸が全身が震えた。俺にとっての聖地サントリーニ。
何年も恋い焦がれ、焦がれすぎてコツコツ毎日造り続けた愛の島。
ここでも思った。ここにいるどの観光客よりも俺の方がこの島を愛しているぞ~という変な自負。
船から下りて初めて見る景色は、実際のところ初めて見る景色では無かった。
何度も何度も4年の間、サントリーニのあらゆる箇所の資料画像を熟知して来たからだ。
また妙な感覚に自分が混乱する。


写真はいいから早く降りて!とせかされる






この日、港の写真をゆっくり撮影することは出来なかった。
ホテルへは車で行かなくてはいけない結構な距離があり、俺はここで乗り合いタクシーに乗らなくてはいけなく、
ドライバーから「ケニーはいるかあー???」と探されていて皆を待たせる訳にも行かずに車内へ飛び乗った。
くそっ!こんな事ならゆっくりタクシーで行くことにすれば良かった、、と後悔しながら車内から見える景色を慌てて撮影し続ける。






想像とは違いサントリーニは相当な田舎であると肌で感じた。
今まで見たことのない角度の景色や、誰も撮影しない田舎部のシーンをこの目で確認することが出来て
それまで持っていたイメージとは若干異なるサントリーニがここにあった。
密集した絶壁部の観光地はごく一部で、ここで生活している住宅部のいかに広い事広い事。
広い平地にしっかりとした面積を取った個人宅が散在している。
そう。斜面に建物がくっつく景観はほんの一部なのだ。他はほとんど大平地。地元、北海道の十勝平野を連想させる。
殆どが枯れた土地に見え、作物はあまり採れないだろうなと想像。
火山灰で出来た農地は水はけが良すぎて作れる作物は限られるであろう。
ちなみにここの名産はブドウ。ワインの産地で有名だ。

ぴっかぴかで可愛い色合いのホテルと、廃墟なのかこれから建造するのか分からないが放ったらかしに見える建物が隣接する不思議な光景。
若い頃建設業で5年汗を流した経験があるが、こちらの建造手法は日本のそれと大きく違うように見え面白かった。
作りかけの建物については長い滞在の間、じっくり観察しに行ってみようと思った。
どのようにこのカマボコ型の住宅を建てて行くのか、昔から興味があったがちょうど良い資料が見つかっていなかった。

順にバス停に停まり人が降りてゆく。そうこうして終着駅に着いた。
今日宿泊するホテルは見事に美しい建造をしていた。ロケーションも最高だ。
イア(Oia)という閑静な高級街のちょうど中心部に位置し、有名な夕日を見る丘もイアのメインスクウェアと隣接している。
なんと部屋のレセプションの奥のドアを開けたらすぐにそのスクウェアに出る事が出来、
スクウェアには俺の大好きな教会がどかんとそびえ立っている。
「これは想像していた以上の最高のホテルだ!」と心の中で、はしゃいだ。





 Silent night Holy night...
置いてある小物が超かわいい


テラスに上がったら教会が間近に!


それに加えこの旅で何度も情報を下さったブロガーさん(emicoさん)がこのホテルに住んでいるのだ。
ご主人はこの地に30年以上住んでいるそうで、国際結婚された日本人女性だ。この地で唯一の日本人ガイドさんでもある。
笑顔がキュートな可愛らしい女性、一目で安心出来る雰囲気を持ってる方で見知らぬ地に来たばかりの俺はホッとした。
彼女のリクエストであった”歯の折れるくらい堅いおかき”と北海道名物である六花亭のお菓子の詰め合わせを手渡したら喜んで頂けたようだっだ。
マルセイ バタサンドは外国人にもめちゃウケしていて大満足。

さて、まずはお決まりのwi-fiの接続確認をする。これが宿泊先を変える度に一番大事な確認項目だ。
接続のパスワードを教えてもらい設定するも、うんともすんとも接続しない。
何十回と試すも無理。ホテルの従業員の方もおかしい、おかしい、言いながらも
「たまに接続できない人がいるんですよね・・」とあまり力になってくれなかったので
今日はネット接続を断念することにした。まぁそういう日もあるだろう。

急に便利なITツールが無能になると困り果てる物であるが仕方がない。
テレビでBBCが流れている。しばらく出来なかったニュースチェックでもしようと
想像以上に大きな部屋でテレビを眺めながら軽食を取った。

翌日判明することなのだが、この日Twitter経由で同じくサントリーニ旅行中の日本人女性さんから「一緒にイアの夜景を見ませんか?」という携帯番号とともにお誘いが入っていた。
何ともかんとも。イアの夕日を見る小高い名所へは歩いてわずか10分ほど。
もしこの日Wi-Fiが繋がっていたら俺はこの方と一緒に夕日を見ていた事だろう。
アブダビのように偶然のようで必然的に引き合う縁もあれば、
この方のように場所も時間も全てバッチリだったのに出会えない縁もある。
人生とは本当、不思議な物なんだね。すごく面白い体験と思った。

ところでこの日は移動日ということもあり、やけに疲れていた。
食事もろくに取っていなかったので、久しぶりの軽い食事を取ったらとたんに眠気が襲ってきた。
あいにくサントリーニ初の夕日は忙しくて間に合わず見逃してしまったが
なんて事はない。まだ15日滞在するわけだ。いつでも見れるさ、とホテルでのんびり過ごした。
ひとまず軽い散策だけはしてみようと30分ほどイアの街をぶらぶら。
オフシーズンと言うのに結構な人だかり。
狭い小道を大勢が行き交う。皆楽しげだ。

アトランティスブックス これもシムで再現してた。
そりゃもう興奮。


まんまるお月さん


Aspakiホテルだ!

Heart Reef Resort 0032



ほとんどが若いカップルで新婚旅行なのだろう。
愛の島と呼ばれるサントリーニ。そしてハネムーンでやって来て夕日を見るのだ。
この夕日を一緒に眺めると永遠の愛が約束されると言われているらしい。
それくらい心が揺さぶられる程の美しい夕日がこの街から堪能出来る。

明日は絶壁に位置するいいホテルを取っているから明日、じっくりと自室から夕日を堪能してみよう。
イアは閑静な街と言われている。賑やかなフィラの街とは違うのだろう。
数日後フィラの街へ移動して宿を取るがあちらは深夜も若者が騒いでいるらしい。
界隈に鳴り響く虫の音。すごく風情を感じている。
出国前の札幌ではとっくに初雪が降っていて、またこうして秋の虫の声を聞けるとは驚いた。
見上げると満点の星空。不意の景観に心を奪われる。

無音。イアの町はとにかく静か。
朝の3時から起きているせいもあるが、散策してみると開いているお店は一軒も無かった。
ここがミコノスと大きく違う点と思った。ミコノスなら何時でも開いている店があった。キオスクでさえ。
なのでここは夜が深くなる前に必要な物は買っておかなければ、どの店も閉まってしまい困る事になるだろうと知った。

意外かも知れないがミコノスもサントリーニもコンビニと言われる店が存在しない。
そういった点で、日本での生活様式とこちらのそれは、かなり異種な感じがした。
外国だから当たり前と言えば当たり前だが、エーゲの島はやはりのんびりしているんだな、と気づく。
どちらが良いのかは俺には分からなかった。
ところで些細な事であるが、ギリシャのドアの鍵は非常に掛けにくい。
どう説明していいか迷うが鍵をどっちに回すと閉まるか、何回回すべきなのか
(右に4回で閉じる。逆が開けると後でようやく分かる)
毎度掛けるたび手探りだ。なので俺が鍵を開け閉めする際は無駄なアクションが付きまとう。
これを皆が寝静まった時にやってしまうと結構な騒音になっている。
早く法則性を見つけなければと思いつつも、エーゲ海6日目になるがまだ順応していない。
雨戸もそう。ギシギシ立て付けが悪かったり噛み合わせが悪い。強風の街なのにバタンと閉まらないようにする仕掛けもない。
こういうスローライフ加減が、どこに行ってもおばあちゃんの旧家へ訪ねたそれと非常に良く似ていると思った。
逆にあらゆることに手が届く、日本人の造る設計はどれも神経質なのだろうな、とも様々な点で感じ取る事が出来た。

ギリシャは本当テキトーだ。わずか数日の滞在で思い切りそう感じちゃう。あまりに事例がありすぎて挙げきれないよ。笑
そういうのもいいのかもしれない。人生急いで過ごす必要も無いんだよ、と知らせてくれている感じがした。

今日はいろんな事に疲れ気味で、写真を撮る事さえおっくうだった。
せっかくの美しいホテルを撮らねばと思えば思うほど睡魔が襲ってくる一日であった。
写真を撮ることに必死になるのもいいが、何もせずただ大好きな教会や建物の側でじ~と肌で感じる作業も大切と思った。

こうしてサントリーニ初日は、ごくごく平和に過ぎ去って行ったのである。
良くぞここまでたどり着けたもんだ。もう何も言う事はない。改めてみんなに感謝!


つづく

★サントリーニ イアの町の全ての画像はこちら

その1

その2