2011年11月5日土曜日

【エーゲ旅行記】いざ出発! そして災難のはじまり

2011年10月4日

朝はやっぱり寝坊した。
3時間も寝坊した。
あまりに準備作業が多すぎ、当日朝早くに残りを片そうと思ったのがそもそもの間違い。
もう目が覚めた瞬間、心臓が凍り付きそうになりながら慌てて準備をし、飛行場までの高速バス乗り場までタクシーを走らせた。
旅行日程や大事な予約券などをプリントアウトもしておらず、我ながら十分にルーズすぎる。
仕方がない。前日も相当多忙で翌日に回すしか方法が無かった。


バスが定刻通り発車し,ホッと一安心しながらiPhoneのバッテリーが気になり電源を落とす。
この電源OFFが後々の災難を呼ぶ事になるとは、息を切らしてバスに乗り込んだ俺はまだ知る由もない。
新千歳空港に着き、ANAのチェックインを済ませようとカウンターに行くと、受付の女性職員から信じられないお話を聞くことになる。


「ケニーさん、実はたった今入った連絡でアブダビ発アテネ便が、暴動で空港が占拠されるとのことで閉鎖になったようです。このため予定している便が欠航になりアテネへ行くルートが今絶たれてしまいました。代替の便が成田空港のエティハド航空カウンターで詳細を聞けるかと思いますが、どうなされますか?」


ええええええええ と叫ぶ。
俺 「チェックインするかどうかの判断のタイムリミットは後どれくらいありますか?」
  職員の女性「およそ30分しかありません。」
    俺「分かりました。」

職員の女性「恐らく旅券を手配した代理店さんから何かご連絡が行かれてるかと思います。一度代理店さんに連絡をしてみてはいかがでしょうか」

iphoneをバックパックから出してみると着信が確かにあったようだ。10分前だ。
10分前と言えば、何をしてただろう、何で気づかなかった!バカバカ俺!

そこで代理店に電話をかけてみるが、やな予感がする。このサポセンはちっともつながらない電話なのだ。
数日前の問い合わせの時は1時間も保留にしたまま結局繋がらなかったのだ。
この日も結局15分たっても結局繋がらない。
半ば失意のどん底のまま(怒りと不安が入り交じった感情)で、相棒にヘルプ電話をかける。
どうしたらいいだろう、かくかくしかじか。
「成田まで行っている間に何か進展があるんじゃない?向かった方がいいよ!」
なんてポジティブな相棒なのだろう!いつもこうしてチキンな俺の背中を押してくれる。
「よし!分かった。向かうわ。後は成田で考えよう。ここでじっとしてても仕方ないね」
チケットカウンターで「成田へ向かいます」と女性職員さんに伝える。
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」すごく同情に満ちた視線で見送られた。
飛行機に乗り込み、窓から外を眺める。
果たして無事にアテネへ、ミコノスへ、サントリーニに辿り着けるのだろうか・・・




不安で胸がいっぱい。朝の寝坊から通算するとかれこれ4時間ほどドキドキしっぱなし。

何だかあれこれ思いを巡らせていたら、成田までの1時間半は一瞬で過ぎ去った。
これが相対性理論なのであろうか。いやきっと違う。俺は理系じゃなかった。だから寝坊するのだ。
成田空港に着き、まず早速エティハド航空カウンターへ向かう。


カウンターはがらんとしていた。それもそのはず。離陸まで5時間もある。
まだ今は3時ちょい。離陸は8時50分。カウンターが開いて職員がやってくるのは5時半くらいだそうだ。
よし仕方ない。その間にあれこれアテネ暴動情報など調べてみなければ!
空港のwifiはちっとも役立たなかった。自前のタブレットPCがうんともすんともブラウザを読み込んでくれない。
フリーのwifiは諦め、10分100円の有料インターネットのPC前に座り、アテネ暴動情報をサーチすることにした。

残念ながら日本語でのソースはいっこも見あたらず。過去のアテネ暴動しかHITしないではないか。
「暴動ってほんとかぁ?ガセじゃないのか?」などと思いながら、今度は英語でサーチ。
HITした。アテネの公務員の一斉ストライキにより順に職種ごとに国中でストライキが行われると。
なんだ、暴動じゃないんじゃん。大げさな、と思いきや、ちょうどアテネに着く予定だった10月5日(つまりこの時点での明日)が24時間ストライキ宣言されていた。数日前にはタクシー業界も大規模ストライキがあったようだ。
Greek General strikesて書いてる。なんだ予告ストなんじゃないか?と緊急性を否定したくなった。
事前に公表されてんじゃんと。。



5日が24時間ストライキなら全部アウト。アブダビからアクセスするのが5日だったし、この日はすぐにアテネからミコノスへ飛ぶ日でもあったからだ。
さて、そうか。事情は見えてきた。24時間宣言ならまだまし。翌日には代替便に乗れるであろう、と勝手に見込んだ。
そうなるとミコノス行き飛行機をキャンセルし、ミコノス入り初日のホテルもキャンセル、アブダビで急遽一泊すればいいだろう、とこの時は悠長に考えていた。


5時半になりエティハド航空のカウンターにお客の列が出来ていたので、よし俺も並ぼう。
順番が回ってきて、パスポートを見せたとたん、「あ、ケニー様ですね、伺っております。アテネの5日の閉鎖の件で、代替の便が今まだ調整されていません。その前に代理店さんとお話してみてほしいのです。」
その電話は繋がらないし、どうせたらい回しになるから俺はしたくないと伝える。
相手も折れない。こっちも折れない。がしかし埒があかないのでまた電話ボックスへ向かう。
千歳空港で聞いた話とやはり違う。たらい回しの始まりを予感する。


テレホンカードを買う。1000円分。きっと長い間保留にされるに決まってる。
そう思ってかけ始めるとコール5回で繋がる。
う、うそーーーーーーーん。1000円分買った意味ないんですがーー。
「ケニー様、かくかくしかじか(既に知っている内容)なので、代替の便はエティハド航空から提案される手はずになっております。」

ぴきーーーん。やはり。血管が浮いてキレそうになる。ていうかキレた。
まず何より尋ねた。何でもっと早く言わないんだ。自宅を出る前だったら出発日を見送ったはず。もう成田にいるんだ。
相手も反論してくる。お電話しました。ただケニー様の携帯電話が電源が切られていたようです。
むむ、、、、うん。思い出した。新千歳へ向かう空港バスに乗った瞬間、気分良くiphoneを切りました。
そうか。あのとき電源を切っていなければ、あのまま引き返せたのか。むむ。寝坊は怖し。
と思いながらこの電話を切ってしまったら、たらい回しは終わらない。
「エティハド航空の方と代替便の事を話し合ってください」何おーー!!
航空会社の人は代理店と調整してほしいという。たらい回しの始まりだー。

半ば強引に、エティハド航空の担当者へ電話をしてもらうよう誘導した。
代理店の担当女性は電話口の向こうですごく嫌そうな口ぶりであったけど何とか業者間で打ち合わせてもらえる事が出来た。

少したってから航空会社のカウンターで代替案を提示された。
何だか上司らしき女ボス。周りの若い子がすごく顔色伺うような感じ。オーラがあった。
「ケニー様、代替の便の件ですが、全ての日程が二日遅れになってしまいました。アブダビ行きの便が明後日になります。」
ん、んと、成田(国内)で二泊してどうするの??
相棒に相談の電話する前に、一人でじっと考える。ディズニーランド?うそだろ?趣旨がずれるじゃん・・・
俺はエーゲ海に行くんだ。It's a small worldに行くのではないっ!
本当に葛藤したけど致し方ない、二日遅れで了解した。
すっかり脱力放心し、人の少なくなった夜間の成田空港で一人たたずむ。
前途多難というのはまさにこの事で、手に持ってたコーラがやけにまずかった。




今日何度も代理店とやりとりしたおかげでiPhoneの電池が死にそうだ。
隠れてこっそり充電してやろう。いいコンセント場所を見つけた。




ふーう。本当だったらもう搭乗口付近でアブダビ行きに乗っていたんだろうなあ・・・
その時ひらめいた。成田じゃなくアブダビで二泊すればいいではないか!
何でさっき気づかなかったんだ。
重いトランクを引きずって走る走る。広い成田ロビーを全速力で走った。
閑散としたロビーで清掃員がこっちを見ていた。
見られていると思うと、わびしい思いが何故かした。


離陸まで残り30分程度。無理矢理アブダビ行きの便に今乗る!とカウンターに伝える。
今まで見たことのない、嫌な表情をするカウンター職員たち。
何だかこっちがクレーマーに思われているかのよう。
「俺は予定通り進行させたいだけだーー。何が悪いのだ!」
と口には出さないが態度はそのように振る舞った。
もう厚顔無恥はこういう時に発揮しなくてはダメだ!の勢いで。
見るとすぐにそうと分かるボス級の女性職員が二人増えていた。
さっき、航空欠便証明をもらった時に対応してくれた人も怪訝そうにこっちを見ている。
突然の俺のリクエストに職員さんほぼ総出でなにやら調整している。
女性社員の多い職場は怖い。目つきが怖いのだ。
病院の看護婦もそう。明らかに視線で分かる。


と上司らしき女性が近づいた。「私どもでは勝手に便を変更出来ないのです。代理店さんの許可がいるのです」
ピンと来た。これは体のいい断りだ。諦めてくれのサインだと分かった。
諦めてなるものか。しかし代理店の電話は受付夜の7時まで。もう7時はとっくに回っていた。
試しに電話をかけてみるも営業時間終了のガイダンスが悲しく流れる。

ひらめいた。さっきエティハド航空の社員と代理店は電話で話していたはず。
その時は一般公開してないオフィスの代表番号でかけていたはずだと推測。
着信履歴を確認してほしいと航空会社に頼んで見ると、やはり思ったとおり。
その秘密番号を教えてもらい先程までやりとりしてた代理店職員とホットライン成功!!
かくかくしかじか。
「あ、大丈夫ですよ、私どもはいっさい構いません。航空会社さんが何と言うかだけですね。」
ほれ見てみい。思ったとおり。鵜呑みにしないで正解だった。
これはもう二者間で直で話してもらわないとダメだ。手に持ってるiPhoneをボスに渡す。
10分ほどやり取りした様子のあと、無事チェックインが出来た。。。。。
何だか無性に涙がにじむ。


エティハド航空の「いってらっしゃいませ、お気をつけて」は一切無かった。
「いいから早く行け」的にそっぽ向かれ彼女らはルーティンワークに一分も早く戻りたかったようだ。
胸の中でたっぷり悪態を浴びせた。ま、でもいきなりのアレンジメントをしてくれたわけだ。全て良しとしよう。

さて急がねば!!!もう10分も無い。慌ててトイレに駆け込み、両替所へ向かう。
がしかし、当たり前か。8時付近で両替所はとっくに閉まっていた。ていうか辺りには清掃員しかいない。
閑散としている南ウィングを突っ走る。走る走る走る。
この時の俺はまだ知らない。2日早くアブダビ入りすることの悲劇。
ATMに立ち寄る時間も無く、両替所が閉まっていた悲劇を。


10月4日 夜8時50分、恐らく乗客で一番最後。
アブダビ行きの便に、文字通り飛び乗った。


つづく