2011年10月4日 21時
成田発 アブダビ行きの機内はやけに騒々しかった。
飛行機は何度も乗っているが、こんなに騒がしいのは初めてだ。
映画に出てくるような、緊急アナウンスが入る。
「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」
間もなく、運ばれていく患者、それに続くアテンダント、医者。
なんと俺の後ろの夫婦が医者だった。
お陰で出発そうそう席の背もたれを十分に倒すことが出来た。
長旅。12時間。狭い席。息苦しくてめまいがした。
でも無事乗り込めた安堵感で、少しだけ今日起こった事を冷静に振り返れた。
寝坊、バスまでのダッシュ、急な欠航とアテネ空港のストライキ、便の変更・・・無一文状態。
なにせ寝坊したもので銀行にも立ち寄れず、財布には日本円も無い始末。これが旅行初心者のよくやる失態なのでしょう。
旅行を完璧ナメていたというケースなんだろうな。
早々に腕時計とiPhone、デジカメ、タブレットPCの時刻をアブダビ時間に合わせておいた。
また緊急アナウンスが入る。「機内では禁煙です。」何度も繰り返していた。
たまたま横に座っていた人がHIS添乗員で、彼は慌ただしく何度も席を立ったり座ったり、同業者と思わしき人がやって来ては、コソコソとなにやら打ち合わせをしている。
聞き耳を立ててみた。
どうやらHISツアー客の一人がトイレでタバコを吸い、
それだけならいい物の、アテンダントに食ってかかったそうだ。
で、何やら話によるとパスポート没収やら、逮捕やら、ブラックリスト入りやら
何だか面倒な内容が聞こえてきた。
世の中いろいろあるねぇ・・・と思いながら夕食を取った後、少しだけ眠りに落ちていた。
気づいたら4時間くらい経過していて、飛行機は上海上空あたり、とにかく喉が乾いて死にそうだった。
機内後部のアテンダントの控え場へ飲み物を貰いに行く。
Can I have some water please?
Sure
水を貰う。もう一杯?と聞かれ、更にもらう。
ありがとう、と席に戻り、やっと静かになった飛行機で、アテネの空港ストライキのせいで予定変更しなくてはいけない予約等々と考えていた。
例えば、アテネ発ミコノス行きの飛行機の欠航のこと。
(これはストライキのせいなのだから無償で他日に振り替えしてくれるだろう)
後は、ミコノス到着日が遅れるので、初日に泊まるはずだったホテルのキャンセル連絡や、
その翌日に泊まるホテルへ到着日遅延の知らせ(これは3泊分既に支払っているから初日分は没収される)
後は、アブダビに到着してから予約するホテルはすぐ見つかるだろうか?などなど。
更に数時間経って、また劇的に喉が乾く。さきほどのアテンダント控え場へ向かう。
シュッとした黒人の男性アテンダントが、長い足を組み、かっこよく座っていた。
彼に話しかけ、水をもらってからしばし談笑。「どこから来た?アブダビには泊まるの?」となったので、これはグッドタイミングと思い、「急遽アブダビ泊しなければならないのだけど、安くてWiFiの通じるホテルで良いところ知りませんか?」
と尋ねてみると、もの凄い親切。いろいろ教えてくれてメモを書いてくれる。
「日本人アテンダントもいるよ。今来るから待ってごらん」
数分後にその日本人アテンダントが現れた。
その女性アテンダントもびっくりするくらい親切で、ずらっとホテルリストや観光場所へのアクセスなど手書きのメモを用意してくれ手渡してくれた。
「ざっと説明しますね、一緒に座りましょう?」、と二人がけの密着系イスを勧められる。
何と!この後耳を疑う一声が飛び込んでくる。「良かったらお食事でもご一緒しませんか?」
えと、この旅すごくドラマチックなんですが、、、と思いつつ自分の都合良く取るのを辞めたおじさんにはあまり動揺は無かった。
嘘です。
電話番号とメルアドまで書き添えてくれ、困ったことがあったらいつでも連絡してくださいとある。
そして「私は明日お休みなのです。自宅がアブダビにあるので何かと詳しいですよ」と。
ん~~。ええええ???この話、帰国後に知り合いに話しても誰も信じてくれないだろうなぁ。「話を盛ってるだろ!?」と言われておしまいだろう。
お礼を伝え、俺の連絡先を伝え席に戻る。
それからの数時間は、寝たり起きたりを繰り返し、思えば案外早く過ぎ去った12時間。
前半のけだるさが、後半のお食事のお誘いの件で一気にテンションが上がり、気がつけばインド上空をとっくに過ぎ去っていた。
男はきっとお爺さんになっても単純なのでしょう。
さて、機内アナウンスで「間もなくアブダビに到着です」とのことで、おなじみの現地の気温や時刻の案内があった。
着陸衝撃もなく、すっとランディングしアラブ首長国連邦にたどり着いた。
Arrivalでは見慣れぬアラビア語を見かけながら異国情緒と同時に、少しかの不安を感じつつ手荷物受け取り所へ向かった。
朝4時。眠いんだか眠くないんだかの不思議な感覚。
トランクを受け取った後、まず建物の外に出てみた。
信じられないくらいの、ムワッとした熱気を体感した。
出口を出た瞬間にメガネが曇り、視界が遮られた。
そして3秒もしたら、汗汗汗、吹き出す汗。
おでこからも鼻からも足からも脇からも、吹き出す吹き出す。
早朝4時でこうなら、日中は一体どうなるのだろうか。
しばらく写真撮影しながら、この暑さを味わっていた。
北国の男にはちと酷であるが、郷に入れば郷に従えである。
そうしたら、出口から日本人らしき男性が出てきた。
気のよさそうな男性だったので、声を掛けてみる。
Hello Are you Japanese?
No
聞けばフィリピン人だった。
10分くらい談笑した。日本人なのに(くせに?)英語うまいじゃん、と誉められ少し気を良くした。
友達が迎えに来るのを待っているという。
数分後、彼の友人がやって来て、3人で紹介をし合った。
二人とも気のいい人たちで、もの凄く打ち解け合ったのだけど、残念。彼らは時間が来たので旅立った。
最後は二人と堅い握手。彼らはすぐさまドバイへ向かうという。
See ya soon in Dubai maybe tomorrow! と別れる。
うーん!幸先いいぞ。旅は楽しい!て素直に思えた。
空港館内へ戻り、さて喉が乾いた
目の前にスタバがある。
その前に、手持ちが無いから、まずはATMから現金を引き出して、カフェのWiFiを使って今日からの2泊分のホテル予約をしなくては!
今は日本円で20円しか持っていない。おいおい。旅行ど素人め 苦笑
仕方がない。出発日の寝坊とアテネ空港のストライキでの航空便の二転三転。
あれこれやってるうちに両替所も閉まってしまっていたのだ。
不幸まであと5分。カウントダウンが始まっていた。
いくつかあるATMで、日本人らしき団体がたむろっていたので興味本位で近寄ってみる。
やはり日本人だった。日本人はチーム行動が好き。
ごめん。中国人にはかなわないか。
何人かに声をかけてみる。異国の地で母国語を話せる事は一瞬ホッとする。
そしてやはり連帯感も。うん、俺も多分に漏れず日本人なんだな。と実感。
さてATMにカードを突っ込み、暗証番号を打ち込んで手続きを進める。
ん、一回エラーではじかれた。何でだ?暗証番号は間違っていないよ。
もう一度、挿入。
ん??????????
カードが一瞬頭を出したけど、またスッと引っ込んだ。
ええええええええ!!!!!!!!ちょ!
ここで旅の素人の致命的失態。
トラベラーズチェックも持たず、現金も20円しか持っていず、成田ではATMで引き出す時間もなかった。
更に追い打ち、今この瞬間全ての金庫役のVISAデビットカードがATMに吸い込まれてしまった。
灼熱の45度のアラブの見知らぬ国で、一瞬にして凍り付くかのような寒気がした・・・・・
つづく。
成田発 アブダビ行きの機内はやけに騒々しかった。
飛行機は何度も乗っているが、こんなに騒がしいのは初めてだ。
映画に出てくるような、緊急アナウンスが入る。
「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」
間もなく、運ばれていく患者、それに続くアテンダント、医者。
なんと俺の後ろの夫婦が医者だった。
お陰で出発そうそう席の背もたれを十分に倒すことが出来た。
長旅。12時間。狭い席。息苦しくてめまいがした。
でも無事乗り込めた安堵感で、少しだけ今日起こった事を冷静に振り返れた。
寝坊、バスまでのダッシュ、急な欠航とアテネ空港のストライキ、便の変更・・・無一文状態。
なにせ寝坊したもので銀行にも立ち寄れず、財布には日本円も無い始末。これが旅行初心者のよくやる失態なのでしょう。
旅行を完璧ナメていたというケースなんだろうな。
早々に腕時計とiPhone、デジカメ、タブレットPCの時刻をアブダビ時間に合わせておいた。
また緊急アナウンスが入る。「機内では禁煙です。」何度も繰り返していた。
たまたま横に座っていた人がHIS添乗員で、彼は慌ただしく何度も席を立ったり座ったり、同業者と思わしき人がやって来ては、コソコソとなにやら打ち合わせをしている。
聞き耳を立ててみた。
どうやらHISツアー客の一人がトイレでタバコを吸い、
それだけならいい物の、アテンダントに食ってかかったそうだ。
で、何やら話によるとパスポート没収やら、逮捕やら、ブラックリスト入りやら
何だか面倒な内容が聞こえてきた。
世の中いろいろあるねぇ・・・と思いながら夕食を取った後、少しだけ眠りに落ちていた。
気づいたら4時間くらい経過していて、飛行機は上海上空あたり、とにかく喉が乾いて死にそうだった。
機内後部のアテンダントの控え場へ飲み物を貰いに行く。
Can I have some water please?
Sure
水を貰う。もう一杯?と聞かれ、更にもらう。
ありがとう、と席に戻り、やっと静かになった飛行機で、アテネの空港ストライキのせいで予定変更しなくてはいけない予約等々と考えていた。
例えば、アテネ発ミコノス行きの飛行機の欠航のこと。
(これはストライキのせいなのだから無償で他日に振り替えしてくれるだろう)
後は、ミコノス到着日が遅れるので、初日に泊まるはずだったホテルのキャンセル連絡や、
その翌日に泊まるホテルへ到着日遅延の知らせ(これは3泊分既に支払っているから初日分は没収される)
後は、アブダビに到着してから予約するホテルはすぐ見つかるだろうか?などなど。
更に数時間経って、また劇的に喉が乾く。さきほどのアテンダント控え場へ向かう。
シュッとした黒人の男性アテンダントが、長い足を組み、かっこよく座っていた。
彼に話しかけ、水をもらってからしばし談笑。「どこから来た?アブダビには泊まるの?」となったので、これはグッドタイミングと思い、「急遽アブダビ泊しなければならないのだけど、安くてWiFiの通じるホテルで良いところ知りませんか?」
と尋ねてみると、もの凄い親切。いろいろ教えてくれてメモを書いてくれる。
「日本人アテンダントもいるよ。今来るから待ってごらん」
数分後にその日本人アテンダントが現れた。
その女性アテンダントもびっくりするくらい親切で、ずらっとホテルリストや観光場所へのアクセスなど手書きのメモを用意してくれ手渡してくれた。
「ざっと説明しますね、一緒に座りましょう?」、と二人がけの密着系イスを勧められる。
何と!この後耳を疑う一声が飛び込んでくる。「良かったらお食事でもご一緒しませんか?」
えと、この旅すごくドラマチックなんですが、、、と思いつつ自分の都合良く取るのを辞めたおじさんにはあまり動揺は無かった。
嘘です。
電話番号とメルアドまで書き添えてくれ、困ったことがあったらいつでも連絡してくださいとある。
そして「私は明日お休みなのです。自宅がアブダビにあるので何かと詳しいですよ」と。
ん~~。ええええ???この話、帰国後に知り合いに話しても誰も信じてくれないだろうなぁ。「話を盛ってるだろ!?」と言われておしまいだろう。
お礼を伝え、俺の連絡先を伝え席に戻る。
それからの数時間は、寝たり起きたりを繰り返し、思えば案外早く過ぎ去った12時間。
前半のけだるさが、後半のお食事のお誘いの件で一気にテンションが上がり、気がつけばインド上空をとっくに過ぎ去っていた。
男はきっとお爺さんになっても単純なのでしょう。
さて、機内アナウンスで「間もなくアブダビに到着です」とのことで、おなじみの現地の気温や時刻の案内があった。
着陸衝撃もなく、すっとランディングしアラブ首長国連邦にたどり着いた。
Arrivalでは見慣れぬアラビア語を見かけながら異国情緒と同時に、少しかの不安を感じつつ手荷物受け取り所へ向かった。
朝4時。眠いんだか眠くないんだかの不思議な感覚。
トランクを受け取った後、まず建物の外に出てみた。
信じられないくらいの、ムワッとした熱気を体感した。
出口を出た瞬間にメガネが曇り、視界が遮られた。
そして3秒もしたら、汗汗汗、吹き出す汗。
おでこからも鼻からも足からも脇からも、吹き出す吹き出す。
早朝4時でこうなら、日中は一体どうなるのだろうか。
しばらく写真撮影しながら、この暑さを味わっていた。
北国の男にはちと酷であるが、郷に入れば郷に従えである。
そうしたら、出口から日本人らしき男性が出てきた。
気のよさそうな男性だったので、声を掛けてみる。
Hello Are you Japanese?
No
聞けばフィリピン人だった。
10分くらい談笑した。日本人なのに(くせに?)英語うまいじゃん、と誉められ少し気を良くした。
友達が迎えに来るのを待っているという。
数分後、彼の友人がやって来て、3人で紹介をし合った。
二人とも気のいい人たちで、もの凄く打ち解け合ったのだけど、残念。彼らは時間が来たので旅立った。
最後は二人と堅い握手。彼らはすぐさまドバイへ向かうという。
See ya soon in Dubai maybe tomorrow! と別れる。
うーん!幸先いいぞ。旅は楽しい!て素直に思えた。
空港館内へ戻り、さて喉が乾いた
目の前にスタバがある。
その前に、手持ちが無いから、まずはATMから現金を引き出して、カフェのWiFiを使って今日からの2泊分のホテル予約をしなくては!
今は日本円で20円しか持っていない。おいおい。旅行ど素人め 苦笑
仕方がない。出発日の寝坊とアテネ空港のストライキでの航空便の二転三転。
あれこれやってるうちに両替所も閉まってしまっていたのだ。
不幸まであと5分。カウントダウンが始まっていた。
いくつかあるATMで、日本人らしき団体がたむろっていたので興味本位で近寄ってみる。
やはり日本人だった。日本人はチーム行動が好き。
ごめん。中国人にはかなわないか。
何人かに声をかけてみる。異国の地で母国語を話せる事は一瞬ホッとする。
そしてやはり連帯感も。うん、俺も多分に漏れず日本人なんだな。と実感。
さてATMにカードを突っ込み、暗証番号を打ち込んで手続きを進める。
ん、一回エラーではじかれた。何でだ?暗証番号は間違っていないよ。
もう一度、挿入。
ん??????????
カードが一瞬頭を出したけど、またスッと引っ込んだ。
ええええええええ!!!!!!!!ちょ!
ここで旅の素人の致命的失態。
トラベラーズチェックも持たず、現金も20円しか持っていず、成田ではATMで引き出す時間もなかった。
更に追い打ち、今この瞬間全ての金庫役のVISAデビットカードがATMに吸い込まれてしまった。
灼熱の45度のアラブの見知らぬ国で、一瞬にして凍り付くかのような寒気がした・・・・・
つづく。